建物明渡の断行の仮処分をおすすめするケース

■ 断行の仮処分とは

「建物明渡の断行の仮処分」は、一般的には見慣れない法律用語かと思います。

簡単に言ってしまうと、悪質な占有者に対する明渡を実行してしまう仮処分、という手続きです。

 

■ 建物明け渡しの流れ

まず、建物明渡を求める法的手続の原則形態は、

  1. 訴訟提起
  2. 明け渡しの勝訴判決
  3. 確定した後に明渡の強制執行

という流れです。

しかし、①→②まで、すなわち勝訴判決を得るまでの間にはどうしても数か月以上の時間を要します。

そうすると、その間に建物を占有している者が別の者に占有を移してしまうことが起こり得ます。

そうなると、賃貸人・物件所有者は、勝訴判決を得て、いざ③強制執行をしようとしてもその新しい占有者に対しては建物明渡の強制執行をすることができません(新しい占有者に対して改めて訴訟を提起しなければならなくなってしまいます)。

そこで考えられる手段が「占有移転禁止の仮処分」を申し立てることです。

この手続は、占有者を固定する仮処分ですので、仮処分の後に占有者が代わった場合でも、前の占有者に対する債務名義(勝訴判決)をもって新しい占有者に対する強制執行を可能にします。

これによって、占有者の交代という執行妨害行為に対処できるメリットがあります。

 

■ 明渡断行の仮処分のメリット

以上のように、「占有移転禁止の仮処分」は、執行妨害への対処としての効果を有するに過ぎません。

ですので、①→②の勝訴判決を得るまでに数か月以上を要するため、結局、③の執行完了までには半年以上の時間がかかってしまいます。

賃貸人・物件所有者としては、一刻も早く退去を完了させたいと考えるのが通常です。

 そこで、検討すべき手段が「建物の明渡断行の仮処分」です。

これは、訴訟で勝訴したのと同様の状態の実現を暫定的に図る手続で、訴訟を経ずに建物の明渡しを仮に受けることができます。

入居者が、契約時に定めた利用目的に反して、暴力団事務所や性的サービスを提供する風俗店として利用しているなど、悪質性が高い場合には、建物の明渡断行の仮処分を利用することで、直ちに明渡しをさせることができる可能性があります。

ただ、建物明渡断行の仮処分が認められるための要件は厳しいとともに、手続も極めて専門的です。

建物明渡断行の仮処分を迷うケースは、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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